小児期は血液検査を行うという健診システムがないため、自覚症状のない脂質異常症は見逃されがちになります。しかし将来の動脈硬化性疾患の予防のためには小児期からの対策が重要となります。機会があれば一度は総コレステロールと中性脂肪を調べるべきでしょう。
小児(15歳未満、空腹時)の脂質異常症の基準値は下記の通りです。
総コレステロール | 220 mg/dL以上 |
LDLコレステロール | 140mg/ dL以上 |
HDL コレステロール | 40mg/dL未満 |
トリグリセライド | 140 mg/dL以上 |
non HDL コレステロール | 150 mg/dL以上 |
A 原発性脂質異常症と、B続発性脂質異常症に分けられます。A原発性脂質異常症には①原発性高コレステロール血症と②原発性高カイロミクロン血症があります。
A 原発性脂質異常症
①原発性高コレステロール血症では生活習慣の指導を行っても180mg/dL以上の高 LDL 血症が持続する場合10歳を目安に薬物療法を考慮します。また 遺伝性があるので、家族内の新たな患者の発見に努めます。
②リポ蛋白リパーゼ欠損症などが原因となり膵炎を生じます。
B 続発性脂質異常症
原因は様々ですが肥満によるものが最も頻度が高いです。また橋本病などの甲状腺機能低下症に伴うものもあります。 小児でも糖尿病も合併しているような高 LDL 血症は動脈硬化性疾患の発生も考えられるため注意が必要です。国際的なガイドラインではLDLコレステロールが血糖管理の強化及び食事運動療法後も130mg/dL以上の場合はスタチンというLDLコレステロールを低下させるお薬の内服開始が望ましいとされています。年齢別に活動量に応じた1日のエネルギー必要量というのは決まっているのでそれに基づいたエネルギー摂取量を摂るようにします。 食事に関しては洋食ではなく魚、大豆製品、野菜、果物、海藻などを用いた和食中心にすると良いでしょう。 小児の運動に関しては楽しみながら続けられるものが良いでしょう。小児の体格の評価として大人で用いられる BMI は、身長差が大きい年代には適しません。 肥満度と呼ばれる指数を用いて肥満度が標準体重の120%以上の場合、肥満と評価します。 内臓脂肪過剰の判定には成人同様にウエスト周囲長を用いて80 cm を基準とします。( 小学生では75センチも用いられます。)
肥満度=(実測体重ー標準体重)÷標準体重×100(%)
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎